お待たせいたしました。僕の初小説の第2回をお楽しみいただきます。
---- ---- ----
一発大逆転を期すため、第4クオーター残り30秒でタイムアウトをかけたエレクツ。ヘッドコーチのカズマイヤーザックは、ひとりのランニングバックを呼び出し、交代させた。
彼は背番号21、デニス・ローゼンタール。長い距離をランでゲインできる、駿足のスーパーランニングバックだ。
サードダウン残り7ヤード、エンドゾーンまで残り40ヤードの地点からのランプレーによる逆転のタッチダウンは、さすがのローゼンタールでも難しいと思われた。対するスペルマンズのディフェンスも、ランではなくパスに備えた作戦を組み、フォーメーションを決めていた。
そして、タイムアウトが解けて、スクリメージが組まれた。
「レディー、セット、ハット!ハット!ハット!」
フィールド全体に、クオーターバックのプレイコールが響き渡り、ボールがスナップされる。
スナップされたボールはすぐさま、ローゼンタールの手に渡った。
スペルマンズのディフェンスは唖然とした。まさかこの位置で、ランプレーしようとは思わなかったからだ。
そうしている間にもローゼンタールは器用にディフェンスをすり抜け、身体を自由自在に動かしてゆく。スペルマンズのラインバッカー、ハヤトとイッキマンはローゼンタールを目指して走り出した。
ハヤトは途中で転倒、イッキマンは何とかエンドゾーン10ヤード付近で追い付きタックルを試みたが突き離され、試合終了まで残り5秒のところで逆転勝利のタッチダウンを決めれてしまった。
実はローゼンタールは、改造人間だったのだ。
昨シーズンのオフに大きな脳腫瘍が見つかったさい、記憶をつかさどる機能を残して、フットボールに特化したサイボーグとして生まれ変わった。長きにわたるテスト期間を経て、きょう、ようやくこの日を迎えたのだ。
後頭部には専用ヘルメットに接続する非接触型コネクターが仕込まれ、それをかぶると「フットボールマシン」へと変わる。ヘルメットの銀色のアイシールドの内側はディスプレイになっていて、相手選手の情報や動きの予測、それを元にした走行ナビゲーションが表示され、それを基に自動操作が行われ、足腰が自由自在にコントロールされるのだ。
さらに、予測しないディフェンスの選手が近づくとセンサーが感知し、新たな走路を示しそれにしたがって自動操作される。
スペルマンズは、まさに、それらに翻弄されたのだ。
だが、ローゼンタールのそのシステムに、異変が起きようとは、まだ、知る由もなかった・・・
(続く)
---- ---- ----
第3回は、5月26日掲載の予定です。
ご期待下さい。